👣逃げた先に「生きる理由」はあるのか
2025年2月27日、柚月裕子さんの最新作『逃亡者は北へ向かう』が発売されました。
ひとことで言えば──
**「読んだあと、何も話せなくなるほど、胸がいっぱいになる小説」**です。
震災を舞台にしながらも、ただ悲劇を描くだけではない。
罪を抱えた青年と、喪失を背負う人々が、“希望を探して北へ向かう”物語です。
📖あらすじ(※ネタバレなし)
2011年、東日本大震災直後。
ひとりの青年・真柴亮が人を殺して逃亡。
震災で機能が麻痺した東北を、彼は「父からの手紙」を頼りに北へ向かう──。
一方、娘を津波で失った刑事・陣内。
もう一人は、行方不明の息子を探す父親・村木。
この3人の「喪失」と「祈り」が、未曾有の災害と混乱の中で交差していきます。
🔍読みどころ①:プロローグの衝撃で一気に物語に引き込まれる
冒頭数ページ──
これだけで読み進めずにはいられなくなる倒置構造。
読者は最初に「真柴亮は殺人犯だ」と知らされます。
でも、彼の視点に立てば立つほど、「なぜ?」が募る。
「逃げているのに、応援したくなる」
この複雑な心理が、柚月作品ならではの魅力です。
🔍読みどころ②:震災描写がリアルすぎて、胸が詰まる
本作は震災直後の混乱を背景にしていますが、単なる舞台装置ではありません。
- 遺体安置所のにおい
- 救援物資を奪い合う人々
- 水道もガスも使えない生活
実際に著者が現地を歩き、話を聞いたからこその“生の空気”が描かれています。
あの混乱のなかで、人はどう罪と向き合い、生きる意味を探すのか──それが本作の問いです。
🔍読みどころ③:「選ばれた人間」なんて、いない
登場人物たちは、皆どこかに“やるせなさ”を抱えています。
- 罪を犯した青年
- 娘を失った刑事
- 息子を捜す父親
「なぜ、自分だけがこんな目に」
「正しさは、誰が決めるのか」
──彼らの葛藤は、私たち読者にも通じます。
それでも、人は“誰かの言葉”や“差し伸べられた手”で、少しだけ前を向ける。
その瞬間が、とても静かで、あたたかく描かれているのです。
🧠 読後に残る“喪失と再生”の物語
正直、読んでいる途中は何度も苦しくなりました。
でも最後のページを閉じたとき、なぜか「少し救われた」と感じたのです。
それはきっと、こう思えたから。
「どんなに傷ついても、人はもう一度“歩き出すこと”ができる。」
📚こんな方に読んでほしい!
- 社会派サスペンスが好きな人
- 震災文学に興味がある人
- 人間ドラマを深く味わいたい人
- 柚月裕子作品ファン(本作は新境地です!)
📢今日のひとこと:「逃げた先にも、希望はある。」
『逃亡者は北へ向かう』は、
逃げること=負けじゃないと、教えてくれる物語です。
生きることの苦しみ、迷い、そして再生──
静かだけど力強いメッセージが込められています。
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